トミ子マガジン 第36号 2006/2/17
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トミ子マガジン 第36号 2006/2/17
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▼「石綿による健康被害の救済に関する法律案」に対する反対討論
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2月3日、参議院の環境委員会、本会議でアスベスト関連法案の審議が行われました。私は委員会で質問、本会議で反対討論を行いました。反対討論の内容をご報告します。
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私は、民主党・新緑風会を代表して、内閣提出、石綿による健康被害の救済に関する法律案に反対する立場から討論を行います。静かな時限爆弾と言われるアスベスト、このアスベストを日本はこれまで一千万トン近くも輸入してきました。このアスベストを吸い込んだことによって発症する中皮腫や肺がんは大変恐ろしい病気です。三十年から四十年という長い潜伏期間を経て発症したときには、効果的な治療法もなく、短い期間で命を奪われてしまう場合も多いのです。既に二万人近くの人の命が奪われました。
アスベストの危険性は早くから指摘されており、政府もその危険性については、遅くとも一九七二年、自らの研究報告によって認識をしておりました。その後、アスベストの危険性についての認識が深まり、各国が規制を強化し、さらにはアスベストの使用を禁止していく中、日本の対応は後手に回り続けました。この新法を作るに当たって、こうしたことの反省を生かして政府は責任をどのように感じているのでしょうか。残念ながら、申し訳ないの一言も謝罪もありませんでした。国の責任を認めていないのです。政府は、予防的アプローチの意識が浸透していなかったことや、関係省庁間の連携が不足していたことなどを認めていますが、だから仕方がなかったのだと言わんばかりです。こうした問題の指摘は、過去を検証して間違いを正すための出発点でこそあれ、国の責任を逃れることはできません。
当事者も入れて第三者機関を設置して過去の対応を検証すべきとの我が党の意見に対しても、各省庁がそれぞれ自分で検証したから大丈夫という始末です。国の責任が焦点になっているこの問題で、とてもではありませんが、お話になりません。
この法案は、アスベストによって深刻な健康被害を受けながら労災補償の対象とならない皆さんに対して、すき間のない救済を迅速に行うための法案であると説明されてきました。しかしながら、この法案による救済制度は、労災補償との間に大きな格差があることが歴然としております、明らかになっており、すき間のない救済とは全く名ばかりだということが明らかになりました。
すき間から漏れて救うことのできない被害者、それはアスベストの危険性も知らされず、したがって身を守るすべもないまま、たまたまアスベストを扱う工場の近くに住んでいたという理由だけで、ある日突然に中皮腫や肺がんなどという恐ろしい病に侵され、生命や健康を奪われた代償が総額三百万円というのは余りにも低過ぎ、公正なものとは言えません。
同じアスベスト被害者でも、労災補償の場合には支給される通院費、休業補償、遺族年金、就学援護費が新法の対象となる方々には支給されず、その代わりに月額約十万円の療養費が支給されるだけです。不幸にして被害者が亡くなった場合の葬祭料も、労災補償と新法の救済制度では額に大きな開きがあります。同じ病気なのに何でこんなに違うのか、国がアスベストの危険を知ったときにすぐにアスベストの使用を止めてくれればこんな病気にはならなかったのに、これが被害者の声です。アスベストによる疾病に対応できる専門の医療機関は限られており、居住地域などによっては、病院に通うための交通費だけで多額の出費を迫られている人も少なくなく、月額約十万円の療養費など交通費だけで飛んでしまうという悲鳴も聞かれています。
子供のころ、何も知らずにアスベストを扱う工場のわきで遊んだために、三十年から四十年たって発症した住民被害者の皆さんは今、正に働き盛りです。そうした被害者のお子さんの中には、家計を支えるために学業の継続や進学を断念してしまったという方もおります。月額約十万円の療養費では、このお子さんたちの就学費を応援するにも不十分であります。結果として、被害者の子供は進学できない。そんな権利は国にはありません。
また、労災補償にも多くの問題があります。時効の問題がその一つです。労災には二年という時効がありますが、中皮腫などの病気は潜伏期間が長く、発症したときには時効になってから何十年もたっている場合が多く、そのような場合、労災の補償を受けることができなかったのです。政府の救済制度では、この問題の解決も先延ばしにし、新たな矛盾を抱えてしまいました。
政府案では、時効によって労災補償を受けられなかった遺族に原則二百四十万円の遺族特別年金を支給することとしており、それに対して労災補償は、暴露業務に従事していたときの、仕事をしていたときの給与を基に算定されるため、潜伏期間の長いアスベスト関連疾病の場合には、遺族年金が時効事例の原則二百四十万円に比べて大幅に下回るケースが出てきてしまいます。なぜ時効の人の方が有利なのかという疑問は当然であります。明らかに制度上の不備であります。民主党は、昨年の第百六十二回通常国会に、アスベスト関連疾病については時効を適用しないようにすること、労災法の改正案を提出いたしました。これが成立していれば、このような矛盾は起きませんでした。
さらに、政府の救済制度の財源は、全事業者、国、地方公共団体による負担となっていますが、この拠出の根拠について、政府の答弁は説得力が全くありませんでした。また、国は事務費の二分の一を負担することは明らかになっていますが、最終的な給付の負担割合もあいまいなままです。やはり、アスベスト対策が後手に回った行政の責任を明確にして、政府自ら前面に立って説明責任を果たさない限り、理解は得ることはできません。
私たちは、健康被害者の無念さ、不安をひしひしと感じ、救済が急務であることを認識してきました。しかし、余りにも問題の多い政府案を前にして、対応に苦慮してまいりました。悩みに悩んだ結果、私たちが立法府としてできる手当てとして、最低限の修正を求める決断をいたしまして、病状や個々の状況に応じて療養手当を増額できることとすること、就学援護費の支給をすること、この二つに絞った修正であります。これならば与党の皆さんの理解を得られるのではないかと期待しましたが、かないませんでした。この救済制度が被害者に寄り添うものではなかったことを改めて浮き彫りにする結果となりました。これでは、この法案に賛成することはできません。
さて、このアスベスト被害を受けられた皆さん、御家族の皆さんの痛みと苦しみを少しでも和らげる努力とともに、これ以上の被害の拡大を食い止めるため、総合的な取組が不可欠となってまいります。国民の健康と安全を守り、環境汚染を防止するためには、私たちの身の回りにあるアスベストを計画的、段階的に除去し、廃棄し、無害化しなくてはなりません。そのことによってノンアスベスト社会を実現しなければ、国民の将来不安は決して消えることはありません。
そこで、民主党は、さきの国会に、国、地方公共団体、事業者の責務を定め、国民とともに一体となってアスベスト対策に総合的に取り組むための基本的枠組みを定めるアスベスト総合対策推進法案を提出いたしました。小池大臣、今日のこの委員会の中でも、被害者の皆さんとお会いをしたときにがけから飛び降りるからねと言った言わないということで議論になりましたけれども、私は今こそがけから飛び降りる気持ちになっていただきたいというふうに思っています。アスベスト問題はやっとスタートの地点に立ちました。このアスベスト問題を解決するためには、民主党のアスベスト総合対策推進法案を制定して、アスベスト対策を総合的に推進する、この必要性を改めて訴えて、私の反対討論を終わります。
参議院議員 岡崎トミ子