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温室効果ガスの排出削減

やっと、安倍総理が提案。しかし、その中身は?
大体、「美しい星」って、一体何だ?

2日前に行った環境委員会での質疑の模様と合わせて報告します。


 安倍総理は24日、2050年までに温室効果ガスを半減する世界共通の目標を提案する、と発表しました。私の感想は、「やっと出たか」と、「やっぱり出たか」が混ざったものでした。

「やっぱり出たか」
 予兆はあったのです。連休中に、「政府が半減を提案する方針を固めた」という報道が流れたころ政府は即座に否定。そしてその後開かれて地球温暖化問題を議論した経済財政諮問会議を、政府は非公開にしてしまったのです。(年に30回から40回開かれる経済財政諮問会議が過去に非公開とされた前例は6年前に2回あるだけです。)また、安倍総理の発表の2日前、22日の環境委員会で私が「温暖化ガス排出削減の中長期目標を立てるべきだ」と質問したところ、環境大臣はこれまでのようには否定せず、「各国が参加することが重要」と繰り返し、経済財政諮問会議を非公開にした措置についても、「現在、ぎりぎりの交渉がされているから」と述べるばかりだったのです。まさか2日後とは思いませんでしたが、「これは参議院選挙までに中長期目標を打ち出すんだな」というのが、その時に私が受けた感触でした。

「やっと出たか」
 民主党は今月初めに発表した「脱地球温暖化 戦略」で、2020 年までに1990 年比20%、「2050 年よりも早い時期に」50%削減することを目標とする政策をあらためて打ち出しています。2050年までに温室効果ガスを半減というアイディアは国際的には、また温暖化対策に関心を持つ人々の間では目新しいものではなく、むしろ、人類の生き残りのためには達成必須のものとなっていました。
 EUは既に「2020年までに」20%削減することを合意しており、イギリス政府はさらに2050年までに「60%」削減する法案を提出しています。アメリカでも、ブッシュ政権こそこうした政策に否定的ですが、民主・共和両党の有力大統領候補はこぞって、2050年までに半減という内容の法案を議会に提出しています。より野心的な削減目標の提示、提言も少なくありません。

 もともとそういう動きがあったところへ持ってきて、いよいよ今年の前半、2050年までに温室効果ガスを半減することの必要性は、一連のIPCCの報告書とイギリスのスターン報告書などによって、ほとんど世界の共通認識になっていました。こういうことです。?今年1月のIPCCの報告書で、地球温暖化実際に進行していて、それが人間の活動によるものであることが再確認された。?4月の報告書では、地球温暖化が、人類に破滅的な影響を与えることが再確認された。?5月のIPCC報告書は、気温の上昇を(温暖化の影響を抑えるために必要とされる)2度以下に抑えるためには、温室効果ガスを2050年までに少なくとも半減することが必要だとした。そして、温暖化を食い止めるためには、向こう20?30年間の取り組みが必要だと指摘。さらに、?スターン報告書は、人類が何もしなった場合の温暖化の被害は最大で世界のGDPの1割にのぼるが、それを食い止めるための費用は1%に収まるとした。

 22日の委員会でも指摘した通り、「2050年までに温室効果ガスを半減する」目標の必要性は、既に避けては通れないものとして世界の多数の共通認識になっており、米中や途上国を除いて多くの国々が既にその方向性を採用しているのです。私もそうですし、民主党の各議員がこれまで2050年までに温室効果ガスを半減する目標策定の必要性を繰り返し環境委員会の場で主張してきましたし、先に述べたように、5月9日にあらためて記者発表した「脱地球温暖化 戦略」であらためて明確な政策として打ち出したのです。安倍総理の発表は、「やっと」出たものだったのです。

内容が不十分
 「やっと」出た提案ですが、その内容も心もとないものです。
 
 まず、繰り返される、「主要排出国がすべて参加しなくては意味がない」というトーンの言葉。そして、「各国の事情に配慮した柔軟かつ多様性のある枠組みとする」という条件。いずれも当然ではありますが、これまでの文脈を考えれば、じゃぁ、アメリカがやらなければ日本はやらないのか、「各国の事情」に「配慮」した結果、骨抜きになる恐れはないのかと疑問符が付きます。そもそも総理の提案は、「世界共通の目標の提唱」であって、日本自らの削減目標の宣言ではないのです。
 そして、目立つ「技術で開発する」という姿勢。技術開発は間違いなく必要条件ですが、万能ではありません。やはり、日本自身がまず、何としても自ら排出削減50%(できれば、それ以上)を達成するという姿勢を鮮明にし、その裏付けとして経済的インセンティブの導入を含む具体的な政策提案をしなければ、議論に説得力はありません。私が委員会で、「まず日本自身の削減目標を明確に打ち出し、その上で世界に働きかけるべき」と主張したのはそのためです。

 もうひとつ気になるのは、明らかにアメリカには気を使っている一方で、途上国に対して見せる、高見に立ったような発言です。総理は「志の高い」途上国を支援すると言っていますが、日本が途上国を「志の高い国」と「志の低い国」に選別するような発言には違和感を覚えます。こんな記述もあります。「ただし、こうした支援は、我が国の提案に応えて、自国の政策を積極的に変えていく途上国に対して行います。したがって、これは日本から政策と協力を提案・発信する新しい形の支援と言えましょう。」これはもはや、日本がやらない、やらないと言っている政策の押しつけと受け止められかねない発言です。

民主党の「脱地球温暖化 戦略」
 繰り返しになりますが、民主党は既に「脱地球温暖化 戦略」を提示しています。これは、まず日本として、2050年より早い時期に50%削減する目標を掲げるとともに、1)国内排出権制度の導入、2)再生可能エネルギー導入の強力な推進、3)地球温暖化対策税の導入、4)省エネルギーの徹底、5)森林吸収源対策の推進、6)環境技術開発、環境負荷低減技術・商品の普及促進、7)環境外交の促進、8)脱フロンのさらなる推進、9)二酸化炭素の「見える化」の推進という具体的な手段をさらに具体的に明記したものです。二酸化炭素の「見える化」は、例えば光熱費の請求書に、二酸化炭素の排出量を記載するなど、私たちが日常の生活などで、どれだけ二酸化炭素の排出をしているかを分かりやすくするものです。安倍総理は、漠然と「1人1日1kg」削減のモットーを掲げて「国民運動」を展開すると言っていますが、民主党が提案する「二酸化炭素の見える化」は、より直接的に個人の努力を促すことができるはずです。こうした政策の裏付けがなければ、削減の道筋は立ちません。

「美しい星」って何?「いざない」、「招待」って?
 そもそも、安倍総理の言う「美しい星」とは何なのでしょうか。また、この提案を発表した時の自らのスピーチのタイトルを「美しい星へのいざない」とし、「皆様を2050年の美しい星、地球に招待したい」と述べているが、ふわふわし過ぎて、ピンと来ません。
 安倍総理には、地球温暖化問題の切迫感が伝わっていないようです。また、自ら率先して日本自らの削減目標を打ち出し、それを持って、何としてもアメリカをより実効性のあるポスト京都の体制に引き込むという気迫がないことがあらためて露呈しました。
 温暖化問題も安倍政権には任せてはいられない。この環境を次世代に残すため、責任を持って取り組みます。