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トミ子マガジン 第2号 No.002 2001/07/06

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       トミ子マガジン 第2号 No.002 2001/07/06
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岡崎トミ子プロフィール
● ラジオ福島から東北放送(TBC)に移り、アナウンサーとして27年間放送の現場で働く。
● 1990年衆議院議員に初当選、1993年2期目の当選、1997年参議院補選で当選し、現在に至る。
● 参議院(3年半)で国会質問など70回。“とことん現場主義”で環境問題・NPO支援・福祉の充実に取り組んでいる。

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▼小泉総理の欧米訪問と京都議定書問題
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アメリカに引き続いてイギリス、フランスを訪れていた小泉総理大臣が昨日の午後、日本に帰ってきました。私は、小泉総理の歴訪中の温暖化問題に関する発言に注目をしていました。京都議定書からアメリカが離脱を表明している問題について、「アメリカが参加しなくては京都議定書の効果がなくなるので、アメリカが参加できるようにすべきだ」という理屈で、京都議定書そのものをぶち壊しかねない状況だからです。
京都議定書は、1997年の12月に京都で行なわれた「COP3(第3回気候変動枠組み条約締約国会議)」で採択されたもので、温暖化問題への対応の枠組みや、各国の温暖化物質(二酸化炭素やフロンなど、温暖化の原因になる物質)の削減量などを決めています。(削減量は日本5%、アメリカ6%、EU・欧州連合7%。)日本が議長国を務めた京都会議は、私が97年11月の参議院補欠選挙で皆様に国会に送り返していただいた直後に開催されました。私も、「大木環境庁長官(当時)が議長としての仕事を放り出して国会に帰ろうとしているので、引き戻して欲しい」という連絡をNGO(市民団体)の方からいただいて官邸に電話を入れたということがありました。
この議定書が発効するためには、議定書に参加した国々のうち、温暖化物質の排出量の合計が、世界全体の排出量の55%になる国々の批准が必要です。すでに多くの国々が批准する態度を明らかにしており、あとは排出量の割合が8.5%である日本が批准すれば京都議定書は発効します。ところが、小泉総理は「あくまでもアメリカの参加をあきらめない」と言い、日本自身の態度については一向に明らかにしていません。フランスのシラク大統領との会談では、フランス、EUの「アメリカの都合で態度を変えることはできない」とする立場との食い違いがいよいよ明らかになりました。今月16日から始まるCOP6再開会合で日本が批准の姿勢を見せなければ事態は深刻です。
もともと京都議定書の内容の詳細は昨年11月のCOP6会合で決められることになっていたのですが、COP6会合はアメリカや日本が後ろ向きな態度をとったために決裂してしまいました。そこで半年間の冷却期間をおいて今年の7月にCOP6再開会合が開催されることになったのです。またしても交渉がまとまらなければ京都議定書がただの紙切れに終わってしまう心配があります。世界中で「日本が京都議定書にとどめをさそうとしている」と大きな非難の声があがっています。
地球温暖化は、温暖化物質によって地球の温度が上がるというもので、気温が100年間で3.5度上昇するとも試算されています。その場合、氷河の氷が溶けるなどして海面が1メートル上昇すると計算されています。そうなるとキリバスなどの島嶼国が水没して消滅したり、バングラディシュ、ナイル川河口域などの低地も水位以下となって数百万人の住民が移動をしなくてはなりません。日本でも砂浜の9割が消滅すると言われています。全体的に暖かくなって、日本でも現在の鹿児島、高知、和歌山あたりの気温のラインが、関東や北陸あたりまで上がってくることが予想されています。コメなどの農作物の減産も心配ですし、さらに、マラリアを媒介する蚊が北上して、最悪の場合、中国北部、韓国、西日本一帯までがマラリアの流行危険地域に入るとも言われています。すでに川や湖に氷が張る時期の遅れ、動植物の移動、樹木の開花や昆虫の出現、鳥の産卵時期の早まりなどが観測されています。温暖化対策は待ったなしです。最大の温暖化物質排出国であるアメリカの参加が望ましいこと当然ですが、アメリカの参加を優先して議定書が葬り去られたり、骨抜きにされては適いません。民主党前政権時代の方針を覆すブッシュ政権の暴挙にはアメリカのメディアも批判を強めており、ブッシュ政権の支持率の低下には環境問題への対応も大きな要因となっています。ブッシュ政権の対応はアメリカ国民の世論を反映したものとは言えません。
小泉政権はミサイル問題についても、せっかく田中真紀子外務大臣がアメリカの立場に対して当然の疑問を提起しかけたのに尻つぼみになっています。「聖域なき改革」を大声で叫びながら、アメリカの主張については理屈も何も抜きに「聖域」扱いということでは、国民の信頼も、国際社会からの信頼も得ることはできません。とくに温暖化問題は、日本が立場を鮮明に打ち出すべき問題です。日本は京都会議の議長国であるばかりでなく、アメリカ・ロシアに次ぐ温暖化物質排出国でもあります。環境保全と国際協調の立場から、なんとしてもまず日本自身が議定書を批准することを明確に断言することが必要です。私は4月10日の環境委員会で川口環境大臣に「まず日本が率先して批准する態度を示すべき」だと訴えました。仙台市議会も他の100以上の自治体議会とともに「京都議定書への早期批准を求める意見書」を採択しています。
日本はまず自ら批准の態度を明らかにし、その上でヨーロッパ諸国とともにアメリカの参加を迫っていくべきだということを、“地球のいのちと子供たちの未来のために”小泉総理にもあきらめずに訴え続けて参ります。

参議院議員 岡崎トミ子