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トミ子マガジン 第21号  2004/4/1

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       トミ子マガジン 第21号  2004/4/1
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▼外国人の犯罪が増えていると言うけれど・・・
―「留学」「就学」認定の「厳格化」をめぐって
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◇参議院内閣委員会◇

3月30日、内閣委員会で警察法改正案の質疑を行い、33分間の持ち時間に納まり切れないほどたくさんの論点について議論をしました。様々な論点のひとつとして、警察官の人権意識を深める教育の必要性についても訴えました。職務執行にあたる際、とくに外国人に対して職務質問や取調べを行う際の接し方などについて、「外国人であるというだけで、最初から不法滞在者のように扱われる」などと言った声を在日外国人や留学生をお世話している方たちから伺っていたからです。私が今回この問題をとりあげた理由のひとつは、「外国人による犯罪が増加して日本の治安が悪化した」というイメージが先行して排他的な雰囲気が広がっていることへの心配があります。

◇中国人留学生の在留資格認定の「厳格化」◇

昨年の12月、今年の1月から日本語学校などで勉強する予定だった中国人就学生の9割以上が法務省入国管理局から「在留資格」を認められなかったというショッキングな報道を毎日新聞がしました。その後確定した数字を法務省に確認したところ、561人の中国人が在留資格認定証明書の交付を申請したのに対して、実際に交付を受けたのは73人だけだったそうです。(3名が取り下げ。)交付率はわずか13.1%。つまり、日本語学校の試験などにすでに受かった学生100人当たり、わずか13人しか在留資格をもらえなかったということです。

この背景には、入国管理局が審査を厳格化する方針を決めたことがあります。人目を引く外国人犯罪(福岡一家4人殺害事件など)が発生したことも受けて昨年11月、今年の4月期生分からの申請について、中国を初めとした4つの国々からの申請の審査を厳格に行うことを決めたのです。1月期生に対して前倒しする形で厳しい審査が適用されたのでしょう。法務省は「不法残留が一時減ったために1999年4月以降審査を緩和してきたが、ふたたび不法残留が増加する傾向にあり、留学生や就学生による犯罪も増えてきたので厳格化する」といった説明をしています。

◇在留資格「厳格化」の問題点◇

しかし、日本語学校が受け入れを決めた学生のわずか13%しか申請を認めないような「厳格化」では、まじめに勉強する意思も能力もある学生が多数はじかれてしまいます。外国人の犯罪がマスメディアなどで大きく扱われますが、当然のことながら大多数の留学生、就学生は犯罪とは無関係です。留学生・就学生の受け入れは、日本ができる最大の国際貢献であるばかりではありません。世界の若者、とくに大変な困難を乗り越えてまで日本で勉強しようとする若者に日本で有意義な時間を過ごしてもらうことは、日本の国益にとっても大きなプラスです。せっかく日本に関心を持ってくれた学生の多くが門前払いされていることを考えると非常に心が痛みます。「優秀な学生をますます欧米に取られてしまう」という学校関係者の声も聞きます。

日本語学校のあり方を含め、改善すべき点はたくさんあります。また留学生・就学生の資格をもつ外国人による犯罪を放置していいはずはありません。しかし、もともと犯罪目的で入国してくる外国人(多くの方たちが心配するほど多数ではありません。)の入国を阻止する手段として熱意ある若者もいっしょくたにして留学生・就学生の受け入れを厳しく制限することはあまり有効ではないと指摘されています。悪質な犯罪者は留学生・就学生として入国することが難しくなれば、他の方法を考えるからです。(もともと勉強する目的で入国したのに犯罪に手を染めてしまうケースについては、生活苦が原因であることが少なくないので、彼らの生活や勉強の支援を充実させることも考えるべきでしょう。外国人犯罪が増えていると言いますが、日本人が犯した場合には立件もされないような軽微な犯罪が多いことも指摘されています。もちろん、軽微だからいいということではありませんが、統計を扱う場合には注意が必要です。)

◇「外国人=犯罪者」イメージ◇

留学生の多くは孤独な気持ち、疎外感を感じて日本で暮らしていると度々聞かされます。そしてたくさんの若者が日本社会に受け入れられなかったという気持ちを抱えたまま祖国に帰っているというのです。最近特に気になるのは、犯罪やテロへの不安から「外国人=犯罪者」という見方が少しずつ広がってきていることです。最近の行政の動きが、そうした傾向に拍車をかけているのではないかと心配です。就学・留学生の在留資格審査の厳格化も心配な動きのひとつですし、入国管理局がホームページ上に「不法滞在等の外国人の情報」をメールで受け付ける窓口を設置したこともそのひとつです。また最初に少し触れたように、外国人であるというだけで警察官から突然職務質問をされ、厳しい扱いを受けて不安な思いをしたという事例も度々聞きました。こういう扱いは外国人を不安視する雰囲気を助長し、また外国人のストレスを高めて、それこそある場合には犯罪に追いやってしまう恐れもあるのではないでしょうか。

◇優しさを感じられる、風通しの良い社会を目指して◇

在留資格審査については早速、民主党の国際局長である藤田幸久衆議院議員をはじめとした仲間の議員たちにも声をかけて勉強会を開きました。そして何人もの議員が国会でもとりあげて質問をし、「メール通報」の件も含め、事態は少しだけ改善しているかもしれません。(4月期生については、中国人もおよそ45%が申請を認められたようです。)普段から親身になって留学生や就学生をボランティアで支えている皆さんの声を受けて国会で動き、成果が挙がりつつあることは、とても嬉しいことです。

将来に対する不安があるとき、どうしても社会は排他的になりやすい傾向をもちます。排他的になって得することはあまりありません。「気づき」を得た私たちがそういう傾向を少しでも改善できるように心を配ることが必要だと思います。国会議員としても個人としても、優しさを感じられる、風通しの良い社会を目指してがんばっていきます。

※ロゼッタストーン(http://www.rosetta.jp/)発行の「女性国会議員メルマガヴィーナスはぁと」3月25日発行に掲載の記事を加筆修正しました。

参議院議員 岡崎トミ子