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トミ子マガジン 第25号 2004/9/14
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▼人身売買の現場/タイ、カンボジア視察報告
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今年の6月14日、アメリカ国務省の報告書が、日本は人身売買対策について最低限の基準を満たしていないとして、「監視対象国」としました。人身売買とは、分かりやすく言えば「搾取を目的として不法な手段(暴力をふるったり、だましたり、弱い立場につけこむこと)によって人を採用、運搬移送、受け取ることなどの全体」を指します。例え本人が同意したとしても、これらの不法な手段が用いられたときは人身取引とみなされます。さらに被害者が18歳未満の場合には、こうした不法な手段がなくても、人身売買とみなされるのです。具体的には売春や強制労働、臓器摘出などのために行われ、日本の場合には、とくに売春目的の人身売買が大きな問題になっています。
アメリカの報告書はこうした人身売買を防ぐための基準をどれくらい満たしているかによって、世界131カ国を3つに分類しているのですが、日本は「最低限の基準を満たしていない国」である「分類2」から、さらに「努力すらしていない国」である「分類3」に転落する恐れのある国として、監視対象国となってしまったのです。大変恥ずかしい話で、一刻も早い対応が求められています。
私は先月30日から今月3日まで、民主党の同僚議員の神本美恵子さん、自民党の上川陽子さん、公明党の丸谷佳織さんと一緒に、ユニセフの方々のお世話でタイとカンボジアに視察に行きました。現地の政府関係者やNGOの方々からお話を伺い、被害者の救済がいかに大切か、繰り返し訴えられました。バンコクの赤線地帯も訪ねましたが、日本語の看板を掲げた店がたくさん並んだ一角には驚かされました。また、日本に売られてくる子どもたち、女性がどういうところから連れてこられるのか、その現場を見るためにタイとカンボジアの国境地帯にも足を伸ばしました。
私たちが訪ねた国境地帯では、カンボジア側からタイ側に毎日200人の、5歳から12歳くらいの子どもたちが国境を越えて歩いて来ては、働かされていました。地べたに座って食用のバッタの羽むしりや蛙の内臓取りなど、劣悪な環境の中で1日50バーツ(130円程度)を稼ぐために、一生懸命になっている姿を見ました。路上で出会ったひとりの子どもは、栄養ドリンクを一本手にして、「5バーツ、5バーツ」と言って私に勧めました。人身売買は貧困が大きな原因と言われますが、まさにこの子どもたちが、家族の保護から切り離されたときに、人身売買の被害にあうのです。この子どもたちが、日々の食料を手にできて、家族や地域社会、コミュニティーにおいて大事にされ、教育の場があることがこの子どもたちを救うことにつながると実感しました。
日本政府も、アメリカ国務省の報告書をはじめとした世界の批判や、国内外のNGOの皆さんの声に動かされ、ようやく来年の通常国会に法整備を提案する動きです。日本が加害者であるという認識を持って、しっかりとりくむことが必要です。政府が検討している加害者への罰則強化はもちろんですが、今回の視察を通じて被害者の救済の視点が法律に盛り込むことの重要性を強く実感しました。人身売買を無くすことがまず第一ですが、保護と自立支援が十分にできる態勢づくりをきっちり進めなくてはなりません。
あるべき法整備の姿については、すでにNGOや研究者の方々が貴重な提案をされています。私たちも国会で、人身売買や女性に対する暴力などの問題に取り組んできた全国のNGOのネットワークである「人身売買禁止ネットワーク」から、包括的な人身売買禁止法制定に向けた、具体的なご提言をいただきました。その主な内容は次の通りです:
○ 人身売買が犯罪であることの明記 ?人身売買加害者処罰
○ 被害者の救済・保護・支援
○ 被害者の法的地位・在留資格・非処罰化
○ 被害者の安全保護
○ 被害者の帰国・再統合の支援
○ 人身売買の予防と人身売買禁止法施策実施態勢
具体的に取り組んでこられた現場の方々の経験と、研究者の皆さんの専門性に裏打ちされた素晴らしい内容だと思います。こうした提言を最大限生かして、その内容ができるだけ実現できるよう、取り組みを進めて行きたいと思います。
参議院議員 岡崎トミ子